水彩画を始めようと思った時、まず迷うのは用具の準備です。絵の具はどんなものを揃えれば良いのでしょう。
小学校の時のような絵の具セットを購入しますか?
画材屋さんには様々な種類が並んでいて、選ぶのは至難の業…。
そこで今回は、初心者の方でも準備しやすい、おすすめのパレット作成方法 をお知らせします。
長い絵画講師の経験をもとに、今まで実際に生徒さんにお伝えしてきた内容をまとめてみました。
パレットを「作る」?
パレットを「作る」とは、そもそもどういうことでしょう。
小学校の時は、プラスチックパレットに毎回必要な絵の具をチューブから出して使いましたね。
けれど、これから本格的に水彩を始める方はどうぞ ご自身のパレットを作って ください。
『空のパレットに、予めチューブから絵の具を絞り出して、乾燥させたもの』です。
ちなみに、これは私自身が普段使用しているパレット↓
絵の具は完全に乾いていますが、水で濡らした筆でなぞると簡単に溶け出します。
なぜ予めチューブから出して乾燥させておくのでしょう?理由は二つあります。
- 気軽に混色して、複雑な色味が出せる
- 経済的
例えばリンゴを描く時。
一つのリンゴのなかにも、赤や薄緑、黄色が混ざっていたりします。陰には淡い青が感じられるかもしれません。
でも、毎回チューブから絵の具を出すのでは、赤と黄色くらいは出したとしても、ついつい面倒で青までは出さないかもしれません。せっかく素敵な翳りが表現できそうだったのに…勿体ないことです。
しかし、予め全ての色が並んでいれば、実に気軽に混色することができます。
これは 表現の幅を広げるため の、大きなアドバンテージです。
次に経済的なこと。
小学校の時は、毎回パレットに出して余った絵の具を「きちんと家で洗ってきなさい」と指導されませんでしたか?
でも洗って全て流してしまうなんて…。
一度しっかり乾燥させた絵の具は、無くなるまで使えます。減ったら同じ色を補充すれば良いことです。汚れたら、混色スペースだけ洗って(もしくは水で湿らせたティッシュでふき取って)綺麗にすれば、いつでもまた使い始めることができるのです。
以上の理由から、ぜひ あなたのパレットを作る ことをおすすめします。
さあ、それでは詳しい『パレットの作り方』です!
絵の具とパレットを準備する
まず、絵の具とパレットを揃えます。画材屋さんには様々な種類がありますが、せっかくなので少し高価でも長く愛用できるものをご用意ください。
|絵の具を用意する
初めて揃える絵の具は、ホルベイン透明水彩24色セット をおすすめします。ホルベインは日本のメーカーです。安定した品質があり、どこの画材屋さんでもたいてい手に入ります。沢山の方々が愛用しているので、技法書などで取り扱われることも多く、汎用性が高いと言えます。色数はお好みですが、最初は24色位が丁度良いでしょう。少なすぎると不便ですし、多すぎると迷います。
※ちなみに『透明水彩』と『不透明水彩』は顔料濃度の違いですが、ここで詳細は省きます。大人の方が水彩を楽しむ場合は、より透明感のある『透明水彩』が良いでしょう。
ただ、私は経験上、この24色セットの『赤系』のバリエーションに物足りなさを感じています。そこで、オペラ と ピロールレッド の二色を単品で追加購入することをおすすめします。
|パレットを用意する
パレットにも様々な種類があります。100均のプラスチック製でも良いのですが、やはり大きさや耐久性などの品質を考慮すると、スチールやアルミなどの金属製が使いやすいでしょう。(プラスチック製は長く使用するうちに変色することがあります)
- 仕切りの数が30程度あるもの(24色セット+α)
- 混色スペースが広いもの
- スチールやアルミなどの金属製
パレットに絵の具チューブを並べる
用具が揃ったら、早速パレットを作っていきます。
ただ、ここで下準備が必要です。適当に出していくと色が秩序正しく並びません。
箱に詰まっている絵の具を端から順番に…と言いたいところですが、ひとつご注意。
色の並べ方はとても重要 です。
例えば隣同士に、黄色と紫の補色が並んでしまったらどうなるでしょうか?
溶け出した絵の具が混ざりあった時、あっという間に暗いグレーになってしまいます。
また、色味の近いレモンイエローとパーマネントイエローが遠くに離れていたら?
二色の微妙な色味の違いを実感できず、使い分けが難しくなってしまいます。
近い色同士は、なるべく側に並べます。そして 寒色系と暖色系 は大きく分けておきましょう。
ホルベインの24色セットは比較的、箱の中に系統だって並んでいます。それでも茶系vs青系、赤系vs緑系 は離して配置したいので、私は並べ方に少し手を加えます。
具体的には以下の通りです。
配置例
【上段】暖色系
- チャイニーズホワイト
- ジョンブリヤン NO.2
- パーマネントイエローレモン
- パーマネントイエローディープ
- イエローオーカー
- バーントシェンナ
- ライトレッド
- バーントアンバー
- クリムソンレーキ
- ローズマダー
- オペラ(別売)
- ピロールレッド(別売)
- バーミリオン
【下段】寒色系
- イエローグレイ
- テールベルト
- パーマネントグリーン NO.2
- パーマネントグリーン NO.1
- ビリジャンヒュー
- コバルトグリーン
- コンポーズブルー
- セルリアンブルー
- コバルトブルーヒュー
- ウルトラマリンディープ
- プルシャンブル―
- ミネラルバイオレット
ちなみに私は黒(ここではアイボリブラック)を殆ど使用しないため、ここには加えていませんが、お好みでミネラルバイオレットの隣に入れておいても良いでしょう。
絵の具を一色ずつ仕切りに絞り出していく
端から一色ずつ、チューブの絵の具を充填していきます。5mlチューブの約半分くらいを使います。
どんどん進めていきます。
隅まで ぎっしり絵の具を埋め込むのがポイント です。こうして隙間を無くしておけば、使用しているうちに他の色が流れ込んでくるのを防げます。
色によって、トロリとしてるものや粘度の高いものなど、個性があります。そういうものなので気になさらずに。
おめでとうございます!
あともう一息!
可愛いですね。私はパレットを新調するたび、いつもとっても愛おしいのです。
乾燥&色名記入
出来立てほやほやのパレットは、まだ絵の具が固まっていません。
うっかりパレットを閉じて保管してしまうと、数日後に開けたとき悲劇が起きます。どろりと流れ出して、他の色と混ざり…。
絶対、乾燥するまで閉じないでください。
開いたまま、できれば 一週間ほど乾燥 させてください。表面は乾いていても、中がまだ固まってないこともありますので、ぜひ慎重に。
さあ、最後の仕上げにもう一仕事。
それぞれ色の側に、色名を記録しておくことをおすすめします。絵の具を補充する際、どれがどの色だったか絶対わからなくなるのです。絶対です。(わからなくなって、うっかり似たような別の色を補充する絵画教室の生徒さんを、星の数ほど見てきました!!)
「私は大丈夫」と思うあなた、どうかお気を付けください。パレットは使用しているうちに色が混ざります。乾燥した絵の具は、見た目もどんどん似通って…、それはそれは混沌としてきますから!
使用するのは油性マジック。色名をパレットに書き入れてください。
もし見た目の問題などで、どうしてもパレットに文字を書きこみたくない場合は、通し番号をふりましょう。パレットの写真を撮ってそちらに記入しても良いですね。
とにかく絵の具の補充時、色名が分からなくなって困ることが無いように。
完成
これで、ついにパレットの完成です。
補充しながら大切に使えば、何年でも愛用できます。
絵をたくさん描くうちに、他の色を増やしたくなることもあるでしょう。お好みに応じて追加し、ご自身のパレットを充実させていってください。
花を描くのが好きな方、旅行先で建物を多く描かれる方、それぞれ使いやすいパレットが違ってくると思います。
世界にたった一つのパレットで、どうぞたくさんの制作を楽しめますように!
【追記】
新しいパレットが完成したら、まず取り掛かってほしいのが 色見本 の制作です。
とても役立つものですので、ぜひ作ってみてくださいね。→色見本の作り方はこちら
コメント
素晴らしい。こんな方法があるとは、思わなかったです。早速やってみます。
コメントありがとうございます。少しでもお役に立てたら嬉しいです。
パレットの作り方、実際の画面もあり、とてもわかりやすかったです。
ところで絵の具名をパレットに油性ペンで記入し、後から入れる絵の具を変えたい場合、記入した絵の具名はベンジンか何かを使えば落ちるのでしょうか?
コメントありがとうございます。
私自身は絵の具名を書き換える際、マニキュア用の除光液をティッシュに含ませ拭き取っています。
除光液はたまたま自宅にある物(ドラッグストアで購入したもの)を使用しており、特にメーカーなど拘りはありません。
油性ペンに関しては専門外なので、これがベストな方法かは分かりませんが「消せればOK」と思っております(*^-^*)
少しでもご参考になれば幸いです。
ご回答、ありがとうございます。
妻に除光液を借りて試してみます。
透明水彩を習い始めました。
このサイトを見てパレットを作る
非常に、参考になりました。
絵の具乾いてから
色見本を作ろうと思います。
コメントありがとうございます。色見本を作るのも楽しい作業かと思います。
どうぞ素敵な作品をたくさんご制作ください!